こんにちは。私は翻訳者のアンです(プロフィールはこちら)。
ライトポストエディットの打診がきたときの話です。
ポストエディットに2種類あるなんて知らなかった
ポストエディット(MTPEと同じ)には「フルポストエディット」と「ライトポストエディット」の2種類があるんだそうです。
何年か前にポストエディットをほんの少しだけやって以来、ポストエディットには強い抵抗を持つようになって、関わらないようにしていました。
そのせいか「フルポストエディット」と「ライトポストエディット」の2種類があるなんて知りませんでした。
名前から推測できる通り「フルポストエディット」は完璧に編集して人による翻訳のような翻訳に仕上げることです。
一方で「ライトポストエディット」は自然で洗練された日本語への修正はせずに、あくまでも最小限の訂正のみをして「意味が通じる」程度の翻訳に仕上げること、みたいです。
ライトポストエディットを断った理由
「ライトポストエディット」だと大幅な変更はしなくていいので楽…のようにも思えるし、打診がきたときもそういう風に書いてありました。
でも「やめといたほうがいい」と直感的に感じたので断ることにしました。
機械翻訳の精度がどの程度なのか見るためにも少しだけやろうかな?とも思いましたが、以前にポストエディットをやったときの大変さとやりがいのなさ、全然稼げないこと、などなどが思い出されて、
結局引き受けないことにしました。
ライトポストエディットも引き受けなかった理由は以下の通りです。
翻訳者にとって本当に「ライト」なのか、かなり怪しい
フルポストエディットとかライトポストエディットと言われても、明確な違いがいまいち分かりません。
ライトポストエディットでは日本語のブラッシュアップは不要ということになっているけど、ブラッシュアップがどうしても必要な場合だってあるはず。
ブラッシュアップが必要な時と不要な時の判断基準が、翻訳者、翻訳会社、お客さんで違う気がするし、後でクレームが発生して、翻訳者が苦労しそうな予感。
それにライトポストエディットであったとしても、もし機械翻訳の精度が低く誤訳や訳抜けばかりだったら、一から翻訳しなおさないといけないです。
この場合、作業が「ライト」なんてことは絶対ありません。通常の翻訳(人手翻訳)と同じ負荷か、あるいは人手翻訳よりも負荷が大きいです。
プロの翻訳者じゃないとできないのに単価が安すぎる
ポストエディットでは訳抜けや誤訳の確認をしていきますが、そもそも「訳抜けや誤訳の確認」もプロの翻訳者じゃないと無理な作業ですよね。
その作業を、人手翻訳のときの単価の5割とか3割未満の単価でプロの翻訳者に頼むって、翻訳とか言語のスキルを甘く見過ぎじゃないかと思う。
最終的にプロの翻訳者にチェックしてもらったり、修正してもらいたいなら、最初からプロの翻訳者に翻訳を依頼したら良いじゃないの、とも思うんです。
ポストエディットのほうが人手翻訳よりも大変だから、むしろポストエディットの単価のほうが高くても良いぐらいだって思います。
訳し直しや訳抜け分の翻訳の単価が人手翻訳の単価ではない
ポストエディットでは機械翻訳の精度が低くて訳し直しが必要なことがありますが、そのときの単価もポストエディットの単価と同じです。
これはおかしすぎる。人手翻訳の部分の単価も、なぜポストエディットの単価と同じなのか?これは搾取です。
精神的にきついし、翻訳が下手になる
機械の訳した日本語を読んでいると頭が痛くなってくるし、精神的にも辛いです。
ポストエディットをやったときもそう思ったし、ポストエディットのレビューで、翻訳者が改悪した訳を大量に読んでいたときもそう思いました。
ライトポストエディットもポストエディットも単価がとても安いので、修正は最低限しかしません。
ポストエディットでは本当の意味での翻訳をすることがほとんどなくなるので、翻訳スキルがどんどん落ちます。
MTPEには関わらないのが吉
MTの質がどうなるのか、MTPEをする人の待遇が改善されるのかによって今後どうするべきかはわかりませんが、少なくとも現時点ではMTPEには関わらないほうが、経済的な面と翻訳スキル向上と維持の面からいって絶対に良いと思っているので、私は一部例外を除き関わらないようにしています。