こんにちは。私は翻訳者のアンと言います。(プロフィールはこちら)
近年、機械翻訳の精度が驚くほど上がっているという話をよく耳にします。
機械翻訳の質の向上によって、翻訳の仕事もなくなってしまうのではないか?という心配する人も見かけますし、私自身も同じような心配をしていました。
でもその心配はしなくても大丈夫かな?というように感じるようになったので、なぜそのように感じるようになったかをご説明します。
機械翻訳の精度が思ったより良くない
冒頭で、機械翻訳の精度が驚くほど上がっていると書きましたが、私自身は「機械翻訳の精度は昔と比べたら上がっているだろうが、100%信用できるレベルの質にはまだまだ程遠い」と思っています。
私はMTPEの仕事をした経験もありますが、機械が翻訳したものには間違いが山ほどあって直すのが大変です。
こんなことなら最初から自分で全部訳したほうが早いというのが正直な感想でした。MTPEに関する記事については下記の記事もどうぞ。
誰でも無料で使うことができる機械翻訳を私も試したことがあります。
けっこう難しい英語のニュース記事やポルトガル語のニュース記事をまず自分で読んで理解した後に機械翻訳にかけてみると、一部正反対の意味に訳されていたり、トンチンカンな訳になっていたり、訳抜けがあったりと、ミスが目立ちました。
すごくシンプルな文章の場合だと大丈夫なことも多いですが、複雑な文章を正確にかつ自然に訳すにはまだまだ時間がかかるか、あるいは、機械には永遠に無理なのかもしれないと思いました。
不自然な日本語になることがある
腕のいい翻訳者って本当にうまくて、訳しにくい英文も見事に訳すんですけど、機械翻訳だとやっぱり直訳っぽくなっていることが多いように感じました。
直訳でも十分自然な日本語になることもありますが、そうでないことの方が多いです。
魅力的な日本語を求めているなら不向き
特にマーケティング翻訳では、魅力的な日本語を求められます。
魅力的な日本語ってなんだろう…という話ですが、人の興味を引く書き方、読み進めたいと思わせる書き方、買いたい、試したいと思わせる書き方、人の気持ちを明るくする言葉、などなど、その定義は文書によってさまざまだと思います。
私がやっているファッションの翻訳では、読み手が思わず買いたくなるような、興味を持ってしまうような、そんな「読みやすくて魅力的な日本語」が求められます。そしてアイテム一つひとつの個性がちゃんと伝わるように書くのが大切です。
そういう場合は機械翻訳だと対応が難しく、一から訳し直さないと使いものにならないことが多いです。
複数の意味にとれる箇所がある
翻訳をしていると、どうしても「複数の意味にとれる箇所」に遭遇することがあります。
調査をして、ひとつの訳に絞れることもあるのですが、どれだけ調査をしても複数の訳し方ができてしまうという場合があります。
そういったときに、人間による翻訳であれば担当した翻訳者が申し送り事項としてその旨を伝えたり、それぞれの訳について説明したりできるのですが、機械翻訳だとそのようなことはできません。
ChatGPTも試してみたけど
ChatGPT、確かにすごく賢いです。
でも、やっぱりマーケティング翻訳には使えないんじゃないかなって思いました。ChatGPTの訳のMTPEも、多分すごくしんどい作業になると思います。
これは分かる人には分かると思います。
翻訳者のアシスタントにはなり得るけど、翻訳者にはなれないんじゃないかなあと、思いました。
ただすごく賢いので、本当に単純な英文の訳はChatGPTで十分、というのは本当な気がします。
まとめ
機械翻訳によって翻訳者はいらなくなる!と言っている人のほとんどは、翻訳とも外国語とも関わりがなく、翻訳が実際にどういうものなのかを知らずにイメージだけで適当なことを言っています。
私の知っている翻訳者や翻訳の先生たちは、現在の機械翻訳の限界があるのをよく分かっていて、翻訳の仕事がなくなるとは思っていないみたいで、私もこの点は同じように考えています。