こんにちは。私は翻訳者のアンと言います。(プロフィールはこちら)
ブラジルのポルトガル語とポルトガルのポルトガル語には、特に発音や単語の面で相違点があります。
そのため、日本人がブラジルのポルトガル語を勉強しただけでポルトガルのポルトガル語を聞き取ったり話したりできるようになるかというと、それはけっこう難しいと思います。その逆も同様に難しいことです。
違いその①-発音
まずこちらのリンクから、「東京外国語大学言語モジュール」へ進み、左上の「実践編 ポルトガルポルトガル語」と、「実践編 ブラジルポルトガル語」から、ポルトガルとブラジルのポルトガル語の聴き比べをしてみてください。
いかがでしょう?どちらも、まったく同じこと文章を読み上げているのに、発音にかなりの違いを感じなかったでしょうか。私が大学生の頃、周りの学生の多くがブラジルのポルトガル語のほうが聞き取りやすいと言っていました。
違いその②-「あなた」の言い方が2つ
ポルトガル語には「あなた」の言い方が2つあります。VocêとTuです。でもTuはブラジルでほとんど使われていません。(ただ、地域によってはtuも使われることがあるみたいです。)
一方で、ポルトガルだとVocêは使いません。Vocêに対応する動詞の活用形は使いますが、Vocêという単語自体はほぼ使わないと考えていいです。
例をあげると、ポルトガルでは「あなたはポルトガル語をとても上手に話します」というとき、
- Você fala português muito bem.とは言わず、
- Fala português muito bem. と言うのが普通です。
ポルトガルでは、たとえば客と店員との間の会話やその他のフォーマルな場面、親しくない人との会話では、Vocêという単語自体は使わないものの上にあげた例のようにVocê に対応する動詞の活用形が使われます。
また、ポルトガルでは、人と出会ってから時間が経ちお互いに打ち解けるようになるとTuや、Tuに対応する動詞の活用形を使って会話をします。
ブラジルではTuは基本的に使われません。そのため、ブラジルのポルトガル語だけ勉強したり、ブラジルのポルトガル語ばかり話していると、ポルトガルでよく使われるTuの動詞の活用形を忘れてしまうことがあります。
これが、ブラジルのポルトガル語を勉強した日本人にとってポルトガルのポルトガル語が分かりにくくなる理由のひとつです。
同じことを言う場合でも、ブラジルのポルトガル語をポルトガルのポルトガル語ではこんな風に違うのです。
- Comeu tudo? 「全部食べた?」のブラジルポルトガル語
- Comeste tudo? 「全部食べた?」のポルトガルポルトガル語
- Foi à escola? 「学校行った?」のブラジルポルトガル語
- Foste à escola?「学校行った?」のポルトガルポルトガル語
- Mudou de casa?「引越しした?」のブラジルポルトガル語
- Mudaste de casa?「引越しした?」のポルトガルポルトガル語
だから、ポルトガル人と話すときはTuの動詞の活用形に慣れていないと、何言ってるか分からなくなってしまいます。
私は、ポルトガルのポルトガル語のレッスンを受ける時はItalkiを使っているのですが、初めてポルトガル人のレッスンを受けたとき、何を言っているのかさっぱり分からなくなりとても困りました。
ブラジルのポルトガル語だけに慣れていたため、ポルトガルでよく使われるTuの動詞の変化形についていけなかったのです。
違いその③-単語
ブラジルのポルトガル語と、ポルトガルのポルトガル語では、使われている単語に違いがあります。以下はその一部です。(ブ)はブラジルのポルトガル語、(ポ)はポルトガルのポルトガル語です。
- スポーツ:esporte(ブ)/desporte(ポ)
- バス:ônibus (ブ) /autocarro(ポ)
- 電車:trem(ブ) /comboio(ポ)
- 市役所:prefeitura(ブ) /câmara municipal(ポ)
- ジュース:suco (ブ)/sumo(ポ)